「説明をされてもよく分かんないですよ」
重要事項説明でよく言われるのが法令上の制限だ。都市計画法、建築基準法、それ以外の法令上の制限などの記載がある箇所であり、作成の前半の山場だ。
専門用語が多く、かつ数字が羅列するので取っつきにくい箇所だが、顧客に聞くと真の原因は「書いてあることが自分にどう影響するかが分からない」点にあるという。そのため、レベルの高い重要事項説明を目指すなら、買主の購入目的を把握した上で、市区町村役場各課での調査結果から一歩踏み込んで、「どう影響するか」を説明した方が良い。できればその影響について、重要事項説明書に記載した方が好ましいが、細かく書くと、もし違ってしまったときに契約不適合責任の問題に問われてしまうので避けた方が無難かもしれない。
ほどほどに書き、買主と言葉のキャッチボールしながら口頭で説明していくのがベターと言えるだろう。どちらにしても、宅建業者として、調査をするだけではなく、買主に説明することを前提によく理解しなければならないのが鉄則だ。
今回から数回にわたって、法令上の調査に絞って、調査とその理解について書かせていただくことにする。
法令上の制限は、市区町村役場では都市計画課、建築指導課をメインで調査をする(まちづくり課、建築課などと市区町村役場で課の名称は様々)。調査の手順は、(1)一通り基本となる調査項目を確認、(2)買主の購入目的に抵触する箇所をチェックし確認、(3)分からなければ窓口でヒアリング、(4)買主に説明できると納得できれば終了と、このような手順となる。
まず都市計画課では「用途地域を教えてください」と窓口の担当者に言い、都市計画区域、都市計画制限・建ぺい率、容積率と順に聞いていこう。おおむね窓口の担当者に該当不動産の住所を伝えると調査項目をすべて回答してくれるので、それをメモっていけば十分だ。
また、窓口のパソコンで勝手に調査をする場合がある。2つの用途に跨るなど特殊な場合や不明な点があるときは窓口の方が良いが、それ以外はパソコンでの調査で十分だ。問題なのは用途地域図(都市計画図)が無造作に置かれており、ご自由に調査をしてください、という市区町村役場の場合だ。場所や図面の読み方を間違えたりすることもあるので、用途地域図を自分だけで確認するのは危険だ。そのため、勇気がいるが近くにいる窓口担当者に声をかけて、「ここの用途地域を教えてください」と聞こう。
稀(まれ)に「ご自由にどうぞ」と突っぱねられる場合もあるが、「読み方がよく分からないのでお願いします」など無理を言ってでも確認しよう。
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【プロフィール】
はたなか・おさむ=不動産コンサルタント/武蔵野不動産相談室(株)代表取締役。
2008年より相続や債務に絡んだ不動産コンサルタントとして活動している。全宅連のキャリアパーソン講座、神奈川宅建ビジネススクール、宅建登録実務講習の講師などを務めた。著書には約8万部のロングセラーとなった『不動産の基本を学ぶ』(かんき出版)、『家を売る人買う人の手続きが分かる本』(同)、『不動産業界のしくみとビジネスがこれ1冊でしっかりわかる教科書』(技術評論社)など7冊。テキストは『全宅連キャリアパーソン講座テキスト』(建築資料研究社)など。