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不動産ビジネス塾 売買仲介 初級編83 ~畑中学 取引実践ポイント~ 「売買契約後に行うこと(2)」 メール等で文面を残す方が良い

 売買契約後に取引の山場を越した安心感と、他の案件に目が向いてしまうこと、この2点から「気の緩み」が起きることがある。「売買契約が終わって一安心。決済まではまだ時間があるし、しばらく他の案件に注力しよう」そんな風に考えていると、「決済日までのスケジュール管理」と「スムーズに進めるための案内と確認」が疎かになり後手後手に回る。あげくに顧客から「案内は前もって言ってもらわないと」とか、「今頃用意した書類が違うと言われても用意できない」とクレームとなる。今回はそうならないように、売買契約後すぐにスケジュール管理と必要な案内を行う、事前対策について述べていきたい。

 筆者も売買契約が終わると気が緩むほうだ。売主に抵当権の抹消手続きの案内を忘れてしまい、慌てて売主の自宅へ伺い、「何とか本日中に銀行に連絡をして抵当権の抹消手続きをしてほしい」と平謝りしてお願いしたことがある。売主は苦笑して許してくれたが、少なくとも「コイツに任せておけば大丈夫」という信用は失ったに違いない。「こんなことしていたらいずれ大きなトラブルになる」と帰り道に考えながら歩いていたら、気が緩む前にスケジュールと必要な案内と確認をしておけば良い、と駅に着く間際に気が付いた。具体的には売買契約後すぐに売主、買主も交えて書面を渡してスケジュール感や、必要な案内を面前でしておくことにした。さらにスケジュールの擦り合わせと、「分かりましたか」と確認を取っておくとなお良いだろう。

 そうすれば筆者が仮に必要なタイミングでの案内を失念しても、売買契約後すぐに説明と内容の確認はしているので、慌てて連絡をしても一度説明をしたことの再確認、と失点が少なくなる。「売買契約後に説明をした通り明日まで必要な書類はご用意いただけましたか」と言うのと、「申し訳ありません、この書類のご用意が明日まで必要でして・・・」と言う場合では顧客の心証は大きく違うだろう。実際はどちらももっと早く連絡しろとツッコミが入るが前者の方が顧客の心証は悪くなりにくいだろう。

 これが事前に対策となるが、タイミングは売買契約後すぐがベターだろう。口頭では言った言わないとなるので書面化、メールなど文面で案内したことが残る方が良い。難点は売買契約の準備と一緒に案内等の準備をする時間の余裕がない点だが、習慣化すればそこまで大変ではないだろう。

 個人情報の関係で会社によっては難しいかもしれないが、Googleスプレッドシートなどを利用して売主、買主随時、が共有化して進捗を確認できると、案内その後の確認としてなお良いのかもしれない。どちらにしても、早めにスケジュールと案内と説明が不可欠ということだ。

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【プロフィール】

 はたなか・おさむ=不動産コンサルタント/武蔵野不動産相談室(株)代表取締役。2008年より相続や債務に絡んだ不動産コンサルタントとして活動している。全宅連のキャリアパーソン講座、神奈川宅建ビジネススクール、宅建登録実務講習の講師などを務めた。著書には約8万部のロングセラーとなった『不動産の基本を学ぶ』(かんき出版)、『家を売る人買う人の手続きが分かる本』(同)、『不動産業界のしくみとビジネスがこれ1冊でしっかりわかる教科書』(技術評論社)など7冊。テキストは『全宅連キャリアパーソン講座テキスト』(建築資料研究社)など。