発表から少し時間が空いてしまったが、25年路線価の話だ。今年の全体的な特徴は3面記事の通りで、全国平均は拡大し、地価の上昇傾向も広がった。それは事実ではあるものの、数字を細かく見ていくと、「結局東京なのか」という印象はぬぐえない。
▼都道府県別の平均上昇率は、東京都がひと際高い8.1%で、2位以下を大きく引き離している。上昇幅の拡大も2.8ポイントと大きく、前年よりも上昇幅が縮小した愛知県や、福岡を除いた「地方4市」を擁する北海道・宮城県・広島県とは対照的だ。路線価が土台とする今年の地価公示よりも、〝東京とそれ以外〟の格差は広がっている。
▼言うまでもなく、各地方にはそれぞれ個性や強み、固有の価値があり、その多様性が我が国の魅力を大いに高めている。路線価や地価公示は、不動産需要の客観的な指標の一つであることは確かだが、それだけで地域価値を計れるはずもない。とはいえ、こうも東京の数値ばかりが目に付くと、「価格」という無機質な単一の基準で国土が塗り潰されていくような錯覚を抱く。これはどうにも面白くない。
▼折りしも、参議院選挙の時期だ。減税なり給付なり、一般的な国民個人の生活を守る施策は、確かに大変重要なポイントだろう。ただ、そこに加えて、「その政策は、広く国全体の持続性に貢献するか」といった視点を、有権者も候補者も持っていてもらいたい。